昨年の東京フィルメックスで上映され、観客から熱い支持を受けた双子の兄弟、ラモン&シルヴァン・チャルヒャーの作品が、満を持して30日から公開されます。
長編第1作の『ストレンジ・リトル・キャット』、第2作『ガール・アンド・スパイダー』、そして3作目の『煙突の中の雀』。
美しくも繊細で、時折ちくっと心に刺さる家族の機微。私たちの知っている世界が、スクリーンのフレームにこんなに美しく緻密に収められていることに感動します。
そんなお二人に、オンライン・インタビューさせていただきました。お話の仕方がよく似ている、息もぴったりのお二人。ピースな雰囲気が映画の樹々の美しさを思わせるようです。

―映画はイメージで語れるところに魅力がありますね。ストーリーらしいストーリーではない、言葉にならないところで多くを物語るお二人の作風に惹かれました。
ラモン:他の映画を観ていて、僕自身も感じるのですが、いわゆるプロット、ストーリーラインがあると、映画の可能性を狭めてしまうように感じるのです。もちろん、ある程度のプロットは映画を観てくださる方をガイドするうえで大事ですけれど、それ以外の不確定な要素、行間だったり、言葉にならないものをより生かして、オーディオビジュアルですね、サウンドや色の可能性で構築して、雰囲気を作り出すことに興味があります。
―その雰囲気が本当に素敵ですね。3作品に云えることですが、たくさんの人が登場して、まさに現実世界のように入り乱れます。どうやって撮られているのか、気になります。
ラモン:多くは脚本に書かれているんです。まず脚本を書いたら、撮影監督のアレクサンドル・ハスケルと準備に入ります。そこでは絵コンテ、あと図面でキャラクターの動線を考えます。キャラクターごとに色を決めていて、視覚化して、動きを見ながら考えるんですよ。とはいえ、脚本を書いている段階から、人の動き込みで脚本を書いています。この部屋にいる時は、ひとりなのか。この人がひとりになれる瞬間は、ここだなとか。なので脚本を書き終えたら、絵コンテを用意して、撮影当日の朝にリハーサルして、ロケ地など現実的な制約に合わせながら撮影するという手順ですね。だから、人の動きは撮影しながら考えています。
―脚本に、キャラクターの動きまで書かれているんですね。自主的に俳優が動いているように見えるところがすばらしいですね。
そうですね、そこは緻密な計算のもとでやっています。すべて計算し尽されている世界です。脚本の開発途中、オンスクリーンのことは黒字で、オフスクリーンのことは緑字で書きます。カメラは固定で撮りますから、フレーム・イン、フレーム・アウトについても書いていて、舞台が日常生活ですから、かなり有機的にいろいろなことが起きて絡み合いますよね。それを構築されつくした世界でやるわけです。冷蔵庫はここにあるとか。その制約の中で演出して。リハーサル中に俳優の提案を取り入れて変わることはありますが、即興は一切ありません。
―監督の作品に出演される俳優さんたちが魅力的ですが、それができるのは優秀な俳優さんたちですね。
舞台俳優も映画俳優もいますが、子役以外は演技経験のある役者さんにお願いしています。室内劇ですから多分に演劇的なところはありますが、そこをわかってくれる皆さんですね。ここに立ってとマークしておけば、そこに立ってくれます。ただ、私たちは固定カメラで撮りますから、俳優がカメラの位置を変えないでいいように、頭が切れたり、余白が空きすぎないように、フレーミングを考えながら動く必要があるのです。でも皆さん数日やると慣れてくれます。

―『シルヴァンさんにもお話伺いたいですが、『ストレンジ~』と『煙突~』ではプロデューサー、『ガール~』では共同脚本と監督を務めていらっしゃいます。一緒に作られているラモンさんの才能について伺えますか? ラモンさんにはシルヴァンさんの才能について伺いたいです。
シルヴァン:こんにちは、シルヴァンです(にこやかなお二人)。ラモンが特別だなと思うのは、物事を分析する力、者を構築していく力、同時に非常に直感的な人でもあるんです。映画を作る前は絵画を学び、ビジュアルアーティストでしたから。フリースタイルのアートをしていたわけで、直感に頼るところがある。けれど、分析したり、物事をきちんと組み立てることもできる、その相反する二つの特徴が才能といえるのではないでしょうか。
ラモン:シルヴァンも分析力と直観力がすごいです。ストーリーを感じ取ることに加えて、すごいなと思うのは編集している時にすごくいいフィードバックをくれるんです。それは脚本についても同じで、シルヴァンの脚本を感じ取る分析力にとても助けられています。そして、映画は大きなチームで作りますから、僕たち双子だけでは作れない。チームのいい雰囲気を引き出して、楽しい現場にしてくれる、プロデューサーとして不可欠な才能を持っています。そこがあって、参加してくださる皆さんがそれぞれの才能を発揮できると思いますから。
―今はこうしてご一緒に映画を作っていらっしゃいますが、子どもの頃のことを伺ってもいいですか?
シルヴァン:子どもの頃から、ビデオカメラでホラー映画もどきの映画を撮っていました。たた、ポスト・プロダクションがどういうことかわかっていないから、編集とか音入れとか、そのあたりはまだわかっていなくて(笑)。ホラー映画をカメラの中で編集しながら撮ろうと思ったけれど、うまくいかなかった思い出があります。映画に限らずにいえば、いろいろなことに興味がありました。建築、人体、医学、詩、文学。二人とも読書は好きでした。ですから、世界観を表現することには惹かれていました。幼い頃から、そういう可能性は持っていたのでは。
ラモン:そうですね。建築も興味がありましたし、樹々や植物に魅せられていました。自然が織りなす世界、音や光、そうした空間に惹かれていました。いろいろなことに関心のある二人ですが、よくやったのは卓球です。双子の兄弟には向いているスポーツなんですよ(笑)。何時間もやっていました。
―どんな映画を作る?というのも普段から話されているのですか。
ラモン:今、二人で2本の企画を考えています。シルヴァンの方が詳しく話せるかもしれないけれど。1本目は……今回観ていただく作品は夏が舞台ですが、次の映画の舞台は夏ではありません。医者と助手が登場して、焦点が当たるのは助手、ちょっとスリラーみたいな感じ。典型的なスリラーではないけれど、助手の複雑な心理を観察していく映画です。2本目は青春、恋愛がテーマですが、こちらもはっきりしたプロットがあるわけではない、そんな世界を描きたいと思っています。
ラモンさんの幼少期、建築に植物……スクリーンの中に構築されたフレーミング、自然の樹々の美しさ。まさに今回の3部作を思わせます。大きなスクリーンで浸ってみてはいかがでしょうか。

取材・文:多賀谷浩子
公式サイト:https://www.animaltrilogy.com/
