#738 ボイリング・ポイント/沸騰

公開中の映画『ボイリング・ポイント/沸騰』。もうご覧になりましたか? こちらの作品、90分間にわたる全編がワンショットで描かれているのです。

全編ワンショットというと、

ヒッチコックの密室劇『ロープ』(1948) や

アカデミー賞で作品賞を受賞したアレハドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ監督の『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(2014)

サム・メンデス監督の『1917 命をかけた伝令』(2019) あたりを思い出される方も多いのではないでしょうか。

そんな作品の中でも驚かされるのが、こちらの作品、編集もCGも入らない正真正銘のワンショットだということ。次第に高まる有機的なエネルギー。監督と役者が集まって作った映画だということを忘れさせるほど、そこには本物のレストランが活気づいています。 “#738 ボイリング・ポイント/沸騰” の続きを読む

#736 夏休みの映画館 2022

学生の皆さんは、今日から夏休み。「夏休みの映画館」という企画をご存じですか?

全国のミニシアター劇場支配人の方々が、夏休みを迎えた小学生~大学生のみなさんに観てもらいたい映画を、それぞれの視点からピックアップして上映するという、なんとも心のこもった1週間の特集上映。高校生以下は500円で楽しめます。

シネコンで上映される大作以外の映画とは、出会う機会が限られてしまう今。1本の映画との出会いをきっかけに、世界にはこんなに多様なワクワクする映画が、そして世界があるのだということを知ってもらえたらという思いから、映画の上映と共に、楽器の演奏やトークイベントも開催されるなど、夏休みの忘れられない「出会い」の場になっています。 “#736 夏休みの映画館 2022” の続きを読む

#735 SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2022

今年もSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の季節になりました。

SKIPシティというのは、埼玉県川口市にある映像施設。映像を上映するホールはもちろん、プロの映画制作から、一般のお客さんがニュースキャスターやグリーンバックの合成などの映像制作を体験できるミュージアム、NHKの過去の番組が楽しめるアーカイヴなど、さまざまな用途に合わせた映像設備が揃います。

SKIPシティ国際Dシネマ映画祭は今年で19回目。SKIPシティの二つの映像上映ホールを会場に、国内外の新作映画を募集し、新しい才能の発掘・育成を目的に毎年、この季節を中心に開催されてきました(昨年は秋に開催)。

日本国内にも様々な映画祭がありますが、東京国際映画祭や東京フィルメックスのように、国内外の新作映画のコンペティション機能を果たす国際映画祭が、東京以外の都市を拠点に開催されてきたというのは画期的かつ面白いことだと思います。

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#734 ベイビー・ブローカー vol.4 ~是枝裕和監督 凱旋記者会見を振り返りながら~

前々回からお届けしている『ベイビー・ブローカー』の記者会見リポート。

映画を観て、これまでの是枝作品よりも、大切な場面の感情を言葉で表していたり、描かれる人物たちの行く末に希望が感じられたという人も少なくないのではないでしょうか。やはり会見でも、そんな質問が聞かれました。

カンヌで主演男優賞を受賞したソン・ガンホさんの印象をはじめ、皆さんが気になる色々なお話、今回も会見中のやりとりを大切に、お届けしたいと思います。

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#733 ベイビー・ブローカー vol.3 ~是枝裕和監督 凱旋記者会見を振り返りながら~

前回からお届けしている『ベイビー・ブローカー』記者会見の模様。

ここからは、この日集まった多くの取材陣から寄せられた熱心な質問とその答えをお届けします。ひとつの質問から広がる答えがとても豊かな是枝監督。その模様をできるだけ忠実にお届けしたいと思います。

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#732 ベイビー・ブローカー vol.2 ~是枝裕和監督 凱旋記者会見を振り返りながら~

前回からお届けしている映画『ベイビー・ブローカー』。カンヌ国際映画祭でソン・ガンホさんが主演男優賞を受賞したことでも話題になりましたが、もうご覧になりましたか?

是枝監督の作品は「行間」に魅力がありますが、それは監督自身のお話にも云えること。

5月に開催されたカンヌ国際映画祭から、そのまま韓国に向かって映画のプロモーションを行い、帰国した空港からの足で駆けつけた凱旋会見。やはり、そのやりとりは面白かった。すでに各媒体で報道されていますが、あらためて、そんなやりとりも中心に、会見の内容を振り返りながら、この映画の魅力を考えてみたいと思います。

6月中旬に都内で開かれた凱旋記者会見

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#731 ベイビー・ブローカー

公開中の映画『ベイビー・ブローカー』。

是枝裕和監督の最新作ですが、監督の映画デビュー作は95年の『幻の光』。主人公の澄んだ佇まいが印象的な、夫を亡くした女性のお話でした。以降の是枝作品には、大切な誰かを亡くした家族の「不在」と「記憶」が毎作品ごとにしばらく描かれていて、

『歩いても 歩いても』でインタビューする機会をいただいた時に、そのことを伺ったら、監督が笑いながら、「海外の映画祭で取材を受けて、翌日の新聞を見たら、自分の顔写真の上にデカデカと“DEATH AND MEMORY”という見出しがついていた」という話をしてくださったのを憶えています。

是枝監督のような作家性の強い監督の興味深さは、ご自身の人生とともに作品が変化してゆくこと。『誰も知らない』(04)で、子どもの演技の自然さが広く知られましたが、ご自身が父親になられてからは、子どもは子どもでも、「親になること」の方に焦点が当てられた作品が印象深く、『そして父になる』(13)『万引き家族』(18)そして今回の『ベイビー・ブローカー』(22)と続いています。

左からカン・ドンウォン、イ・ジウン、ソン・ガンホ。

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#730 『FLEE フリー』 ~青山学院大学・特別授業リポート~

前回のコラムで、お届けした映画『FLEE フリー』。

こちらの映画の上映+学生の皆さんのディスカッションによる特別授業が、世界難民デーである6月20日、青山学院大学の総合文化政策学部・飯笹佐代子先生のゼミ主催で行われました。司会を務めるのは、ゼミ生のお二人。さまざまな意見が聞かれた約1時間。その模様をお届けします。

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#729 FLEE フリー 

公開中の映画『FLEE フリー』。

今年のアカデミー賞や昨年のサンダンス映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭……各国の映画祭で話題になった作品ということ、そして今考えるべき難民の問題が描かれているということもあって、関心をお持ちの方も多いと思います。

もちろん、そういった社会的な側面からも見応えのある作品なのですが、この映画は1本の映画として、大きな魅力を持っている。ひとりの人の人生を描いた作品として、とても心を揺さぶるものがあります。

難民として命懸けの旅路を生き抜いてきた主人公の道のりの中に、想い合う家族がいたり、恋をしたり、当時の流行歌が流れたり……主人公アミンの普通の人生がちゃんと描かれているのです。

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