3月22日~28日までの1週間、新宿K’sシネマで「モンゴル映画祭」が開催されます。
皆さんはこれまで、モンゴル映画をご覧になったことがありますか?
例えば、2003年の映画『らくだの涙』。遊牧生活を送るモンゴルの人たちにカメラを向けたこちらのドキュメンタリーでは、ある時に涙する、らくだの映像が映し出され、その姿が印象的でした。その後、同じ監督の『天空の草原のナンサ』(05)も劇場公開され、映画館に観に行かれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
やはり、モンゴルというと広大な大草原をイメージする方も多いと思うのですが、上の2作品は、そんな遊牧生活を通して、モンゴルの魅力をおおらかに伝えた作品。その一方で、そういったイメージを覆す映画として鮮烈だったのが、2011年のしたまちコメディ映画祭で上映された『タタール大作戦』。こちらは草原も遊牧も出てこない、ハリウッド映画を思わせるようなクライム・アクション。でも、そこにモンゴル独自の面白さが光ります。
そして、2年前に劇場公開された『セールスガールの考現学』は、ウランバートルに暮らす大学生の女の子が主人公。彼女の魅力が鮮烈で、映画を観た人から口々に「彼女は誰?」と聞かれたのを思い出します。
1920年代に社会主義となり、90年代初頭に民主化したモンゴル。それゆえ、世代間での価値観のギャップがあるわけですが、こちらの映画は、魅力的なヒロインと彼女のメンター的な年上女性のシスターフッド的な物語を通して、そういったモンゴル社会の深い部分を映し出していて、印象的でした。

1920年代に社会主義となったモンゴル。映画はプロパガンダの手段として制作されていました。それが1990年に民主化すると、社会主義時代には描かれなかった題材も描かれるようになります。
あれから30年……。
長年、ロシアの影響を受け、立地的にもヨーロッパが近いモンゴルは、独自の文化の吸収・成熟の仕方をしてきた国。つまり、カルチャーが面白いのです。先の『タタール大作戦』にしても、ハリウッド・スタイルの映画というのは、各国で作られていますが、やはりモンゴル独自の解釈が面白い。そのあたり、『セールスガールの考現学』のミュージック・シーンにも見てとれるのではないでしょうか。
モンゴル独自の魅力を携えながら、さまざまなジャンルの映画が制作され、近年、少しずつ世界の映画祭でも注目が高まっているモンゴル映画。そんなタイムリーな時期に、こちらの映画祭が開催されます。

上映作品の中には、ヴェネツィア映画祭のオリゾンティ部門で最優秀男優賞を受賞した『シティ・オブ・ウインド』も。シャーマニズムという題材もモンゴルならではですが、アカデミー賞の国際長編映画賞のモンゴル代表作品となり、大阪アジアン映画祭ではグランプリを受賞しました。
『冬眠さえできれば』は、カンヌ映画祭の「ある視点部門」で上映された作品。一昨年の東京フィルメックスでは審査員特別賞&観客賞を受賞しました。その時のインタビューは、こちらでもお読みいただけますが、経済格差が深刻化しているモンゴルの現状が、ひとりの少年の機微を通して痛いほど伝わります。女性のプロデューサーと監督による撮影現場にも、これからの映画作りのヒントを見た思いがしました。

今回、上映されるのは、ヒューマンドラマはもちろん、ギャングもゾンビも出てくる6作品。新宿K’sシネマの後、3月29日~4月11日までの2週間は横浜シネマリンでも開催予定です。今のモンゴル映画の風、感じてみませんか?
文:多賀谷浩子