#758 第25回東京フィルメックス

今年で25回目を迎えた東京フィルメックス。第1回の記憶が鮮やかに蘇ってくる身としては、あれから25年も経ったのか……と重みを感じずにはいられません。

日本にいながら、三大映画祭で新作が待たれる世界の監督たちが集う場となり、新人監督を発掘する「タレンツ・トーキョー」で見出されたアジア各国の若い映画人が新作を携えて帰ってくる場にもなっていったこの25年。その記念すべき今年もやはり興味深い作品が上映されます。

コンペティションで目立つのは、やはり世界の潮流か、女性の問題を描いた作品。

ジョージアを舞台にした『四月』は、女性の妊娠・中絶がテーマ。妊娠12週までの堕胎手術が法律上は認められているとはいえ、実際は違法のようにみなされている社会の中で、中絶手術を必要とする女性に処置を続ける産婦人科医を描いています。

『サント―シュ』は、主人公の女性の名前がタイトル。警察官である夫が殉職した彼女は、未亡人である彼女が夫の職を受け継ぐことができる制度により、警察組織に入ることに。旧態依然とした警察の中で彼女が目にしたものとは――。男女差別や汚職……インド社会の問題を女性主人公の視点から描いた作品です。

『女の子は女の子』もまたインドの作品。主人公は、寄宿学校で生徒たちを監督する責任ある役割を女子生徒で初めて担った16歳のミラ。そんな彼女が特別な感情を抱くことになる新入生のスリ、そして彼女の母親。三者の関係を通して、インド社会に昔から続く価値観が、女性たちにもたらす影響を浮き彫りにしていく作品です。サンダンス映画祭でも話題になった、注目したい作品です。

そして特別招待作品。

オープニングはフィルメックスの常連、中国のジャ・ジャンクー監督の新作『Caught by the tide』が上映されます。主人公は、監督のパートナーであり、ミューズでもあるチャオ・タオ。2001年をスタートに、彼女が演じる主人公の20年を追った作品だそう。ジャ・ジャンクー作品を若い頃から追っていくと、興味深いのが深みを増していくチャオ・タオの表情。今回の作品ではどんな表情を見せてくれるのでしょうか。

クロージングは、こちらも常連、ホン・サンス監督の新作『スユチョン』。監督の公私にわたるパートナーであり、ホン・サンス作品に欠かせない作品になっているキム・ミニ、そしてまたホン作品の常連であるクォン・ヘヒョなど、おなじみのキャストが出演する、演劇祭を控えた女子大を舞台にした作品。近年、どんどんシンプルになっている感のあるホン・サンス作品。こちらも非常に気になります。

上映作品を見渡して他にも気になるのが、コンペティション部門の『Mongrel 白衣蒼狗』。ホウ・シャオシェン監督がプロデュースに名を連ねている、カンヌ映画祭のカメラドールでスペシャルメンション作品です。こちらも、この機会にぜひ観ておきたい作品です。

今年の会場はご存知のとおり、来年の閉館が決定している丸の内TOEI。天井が高くて優雅な映画空間でフィルメックスが楽しめる貴重な年でもあります。ウェブサイトをチェックして、気になる映画との出会いをお楽しみください。

11月23日~12月1日まで丸の内TOEI、ヒューマントラストシネマ有楽町にて開催

公式サイト:https://filmex.jp