#778 第33回 フランス映画祭リポートvol. 2 ~会場を訪れた監督たち~

今年のフランス映画祭には、日本でもその作品が劇場公開され続けている監督たちの姿も見られました。

今回は、劇場公開予定の2本の作品の上映後Q&Aの模様をお届けします。熱心な映画ファンの集うフランス映画祭の雰囲気、今年も感じていただけたら幸いです。

まずは今週末27日から公開される『そして彼女たちは』のジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督。長年、兄弟で映画を撮られてきたお二人。交互に交代しながら質問に答える、何とも心やさしいQ&Aの模様も健在で、時間の経過を感じさせないその姿をうれしく受け止めた方も多いのではないでしょうか。

たいへんな状況にいる若者たちの姿を、その息遣いに寄り添うように描いてきたダルデンヌ監督。今回、舞台に描いたのは、思いがけず子どもを身ごもった若い女性たちの暮らす支援施設。それぞれ状況の異なる5人の女性が描かれます。

兄のジャン=リュックさんは「5人の女性を描いていますが、それぞれが一つのケースに見えないように。映画を観ている人それぞれが、彼女たちひとりひとりと親密な対話を築けるように描きたいと思いました」

それについて弟のリュックさんは「例えば、病気の症状なら、もやもやとした不調に名前がつくことで解決することもありますよね。でも、僕たちの映画つくりは、そうやって名前をつけて、ラベルを貼ることじゃないんです。誰かにラベルを貼ることは、わかった気になって、その人自身を見えなくする。自分たちの知っている情報の中で、この人はこういうケースの人と分類するのではなく、ひとりの人としてその人自身を描くこと。それによって、人それぞれの複雑さが出てくるのだと思います。だから観てくださっている皆さんも、彼女たちと一緒に笑ったり、喜んだりする。僕たちがつくりたいのは、そういう映画なんです」

さらにジャン=リュックさん「それでいうなら、僕たちはこの5人を実在する人のように愛しています。だから、彼女たちのことをずっと追いながら映画を撮ることができるのです。彼女たちにはそれぞれパートナーがいて、中にはあまり感じのよくない人もいます。でも僕たちは、すべての人物を愛している。だから、観客も自分と重ね合わせて、この人たちはどうなっていくのだろうと見てくださるのだと思います。それが僕たちの信条。上から目線で、ジャッジしているわけではないのです。一人では愛しきれないので、弟と二人でやっています。時々、嫉妬したりしながらね(笑)」

ⓒLes Films du Fleuve – Archipel 35 – The Reunion – France 2 Cinéma – Be Tv & Orange – Proximus – RTBF (Télévision belge) / PhotoⓒChristine Plenus

次にご紹介するのは『ベルヴィル・ランデブー』や『イリュージョニスト』を手掛けたシルヴァン・ショメ監督。ステージに上がると、「日本の映画館は温かいですね」とジャケットを脱ぎ、会場が温かな笑いに包まれました。「日本はアニメの国。僕はアニメーション作家ですから、皆さんが作品を受け入れてくださってうれしいです」。

日本でも劇場公開予定の『Marcel et Monsieur Pagol』の舞台は1956年のパリ。作家マルセル・パニョルの人生を、10歳の自身との対話から紐解いていく美しい作品です。壁にかかった刺繍や美しいインテリア、シルヴァン監督ならではの細やかなアニメーションの世界が広がります。

「今日はアナイス・プティが私と一緒に来てくれましたが、彼女は6役の声を担当してくれただけでなく、重要な役割を果たしてくれています。というのも、今回の作品はアナイスや俳優たちに衣装をつけて演技してもらい、それをアニメーションにしているのです。おかげでアニメーションに命を吹き込むことができました」

© 2025 WHAT THE PROD – MEDIAWAN KIDS & FAMILY CINÉMA – BIDIBUL PRODUCTIONS – WALKING THE DOG

主人公である実在の人物、マルセル・パニョルについての思いを聞かれると、「最初の出会いは10歳、授業でマルセル・パニョルの本を読みました。マルセルが父親について書いた自伝的な作品でしたが、その中でマルセルは10歳の少年として描かれているんです。南フランスの風景、土や岩の感じに、僕は北フランスの出身ですから、まだ行ったことのない南フランスをエキゾチックに感じていました。今回の映画もそんなマルセイユとパリを対比させるように描いています」

会場からはこんな質問が。「私は監督の光の表現が好きで、今回もランプの小さな灯りや壮大な朝日の表現などがありましたが、光を描くときに気をつけていらっしゃることを教えてください」

するとシルヴァン監督「日本に来るのが好きなのは、皆さんの質問が詩的で考えさせられることが多いから。素敵な質問ありがとうございます。光はまさにこの映画のテーマのひとつです。マルセイユは陽ざしの降り注ぐ街。影もくっきりできて、夜も満点の空でランプがいらない。一方、パリは北フランスですから、雨もよく降るし、空はグレー。だからランプが必要なんです。色彩も含め、そういった北フランスと南フランスのコントラストを描いています」

そして、「『イリュージョニスト』の手品師が、この作品でも船に乗っていましたが、作品のキャラクターを別の作品に登場させることは?」と聞かれると、「よく見つけられましたね。僕の映画をとてもよくご存じなんですね」と監督。

「次の映画を作るときに、前作の人物の気分が続いていくのが好きなんです。最初に作った『老婦人と鳩(原題訳)』の憲兵さんが『ベルヴィル』や『イリュージョニスト』に出てきたりね。今回はパニョルがロンドンにいるときに、二人が出会ったら面白いなと思って、登場してもらいました、生きた時代は違いますけれど。せっかくああいう仕事をしているのだから、『イリュージョニスト』であの人物のキャリアが終わってはいけませんからね(笑)。あと、鳩は僕の作品に必ず登場しています。なぜなら? パリは鳩ぬきには考えられない街だから。東京にも鳩はいますか(笑)」

第33回フランス映画祭 2026

2026年3⽉19⽇(⽊)〜3⽉22⽇(⽇)Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ユーロライブにて開催 © 2026 Unifrance

『そして彼女たちは』 3月27日(金)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー(ビターズ・エンド配給)

『Marcel et Monsieur Pagol』2026年公開予定