#754 第24回 東京フィルメックス

毎年、フィルメックスが近づくと、今年もそろそろ年末だなと思います。2000年の第1回から数えて今年で24回目。同じ感慨を抱かれる方も少なくないのではないでしょうか。

今年のフィルメックスは11月19日(日)~26日(日)、有楽町朝日ホールをメイン会場に行われます。

昨年までの2回は東京国際映画祭と同時期開催でしたが、今年は時期がずれていることで、これまで以上にたくさんの作品に触れることができそうです。気になる作品を見ていきましょう。

「特別招待作品」部門で、まず気になるのは『GIFT』。

映画『ドライブ・マイ・カー』の魅力は、車が走り出す時に流れる音楽も大きかったと思うのですが、あの音楽を手掛けた石橋英子さんが、濱口竜介監督のサイレントの短編映画に合わせ、ライブ演奏するという特別上映です。

もともと石橋さんが濱口監督にライブ・パフォーマンス用の映像を依頼したのが、こちらのプロジェクトのはじまり。すでにカンヌ映画祭でも行われているパフォーマンス、東京で観られる貴重な機会です。

ちなみに、『GIFT』はサイレントの短編ですが、同じ製作過程で長編として生まれたのが来春公開の新作『悪は存在しない』ということで、映像に合わせた音楽演奏というと抽象的な映像が多い印象がありますが、今回はどうやら違うのかも……と思ったり。濱口監督と石橋さんが、どんな世界を見せてくれるのか、楽しみです。

他にも気になるのが、韓国のホン・サンス監督の『水の中で』。軽やかに新作を発表しつづけているホン監督(1年に2作品のペースだそう)。ホン・サンス作品が上映されると、必ず観に行ってしまうという方も多いはず。私もそのひとりです。

今回の作品は、すでに観た人たちの中でも話題になっていますが、全編がピンボケで撮影されているそうで、それは映画の何を表してのことなのか、観る前から気になります。

ちなみに、主人公が映画監督であることも多いホン・サンス作品ですが、今回も俳優の青年が映画監督として、俳優仲間と一緒に短編映画を撮ろうとする話だそうで、はてどんな話なのか。楽しみです。

そのほか、『雪の轍』が印象的なトルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン監督の新作『About Dry Grasses(原題)』やワン・ビン監督の212分に及ぶ新作『青春』など、それぞれに独自の作風で強い印象を残す監督たちの新作が上映されます。ウェブサイトで詳しく解説されているので、気になる作品を探してみてはいかがでしょうか。

「コンペティション」部門では、ロカルノ映画祭で金豹賞を受賞した『クリティカル・ゾーン』や、カンヌ映画祭の批評家週刊でグランプリを受賞した『タイガー・ストライプス』、カンヌ映画祭の監督習慣でカメラドール(新人監督賞)を受賞した『黄色い繭の殻の中』など、話題の映画が上映されます。

中でも気になるのが、こちらもカンヌ映画祭のある視点部門で上映されたモンゴル映画『冬眠さえできれば』。タレンツ・トーキョーで「タレンツ・トーキョー・アワード」を受賞したソルガルジャル・プレブダシ監督の長編デビュー作です。

ウランバートル郊外に住む10代の少年を主人公に、今のモンゴルを映し出した作品のよう。こちらの作品は会期中にインタビューさせていただく予定です。どうぞ、お楽しみに。

(文:多賀谷浩子)