#764 第38回 東京国際映画祭リポート vol. 3 ~『エディントンへようこそ』上映後Q&A ~

前々回からお届けしている第38回東京国際映画祭リポート。

vol.1 深田晃司監督のマスタークラス

vol.2 映画『MISHIMA』の舞台挨拶

につづいて、お届けするのは、12月に劇場公開される映画『エディントンへようこそ』の上映後Q&A。

日本でもセンセーショナルかつ考えさせられる作風で、高い関心を寄せられているアリ・アスター監督。

その作風から、どんな人なのだろう……

と気になっている方も少なくはいはず。監督、こういう方です。

素敵な笑顔です。センセーショナルな映画を撮る監督は、お会いすると、とてもよい方が多いのですが、アリ監督も、やはり。

マイクを向けられ、観客の皆さんに一言。「皆さん、楽しんでいただけましたか。僕としても、毎回こんなに反応が違う映画は初めてです」。

監督の挨拶を終えると、この日のゲスト、監督の作品がお好きという河合優実さんが登場しました。

「まず突然、関係ないのに来て、すみません(笑)。日本の観客の皆さんとこの映画が、より深く繋がれるように、今日はお手伝いできればと思っています」

本作の感想を訊かれると、

「監督もご自身のインタビューでおっしゃっていたように、これまでの3部作とは、モチーフの捉え方だったり、印象がすごく違っていて、より今の世界とダイレクトに向き合う作品だなと、その目線に共感しながら観ていました」

それを受け、監督自身も

「毎回、新しいチャプターに入る感覚で映画を撮っていますが、たしかに、これまでと違う部分はあって、より現実的な、日常的な世界を描いているところは、そう言えるかもしれないですね。

ただ、これまでの映画と共通するのは、登場人物たちが自分たちが意識していない大きな力にコントロールされているところです」

 

監督に質問はありますか?と水を向けられた河合さんは

「昨日、もう1回見返しながら、ノートにいっぱい書いたのですが、ニューメキシコの架空の街を舞台にされたということでしたが、日本にいる私たちはアメリカ南西部の空気になじみがないので、どういう土地なのかということを知りたいです」

と、おそらく会場の多くが気になっていたことを質問。監督は「ニューメキシコで育ったので、僕にはなじみのある土地。ずっとここを舞台に映画を撮りたいと思っていました。とても興味深い、複雑な歴史のあるところです。

州としては“ブルー・ステイト”と呼ばれていて、民主党支持者が多いのですが、小さい街はほとんど共和党支持者で、政治的にも複雑で、人種間の憎悪もある。今のアメリカを反映した映画を撮るには、ぴったりな場所だと思いました」

俳優として、アリ・アスター作品のどんなところが好きなのか。そう聞かれた河合さんは「相反する二つの感情が自分の中に同時に湧き上がる感じがすごく好きで、出てくるキャラクターが、今作もですが、映画のフィクションの登場人物としてすごく魅力的で、自分の体を使って『演じる』という仕事をしている私たちにとっては、きっとくすぐられる経験になるのではないかと思います」

日本映画が好きな監督、日本で撮る機会があれば、河合さんが出演する可能性も? と問われると、「一緒に映画を撮りたいと思います」。それを聞いて「Thank you」と感無量の河合さん。

アリ・アスター監督、『ナミビアの砂漠』の河合さんの演技がよかったとのこと。会場からも拍手が起こります。すると、河合さん「なんで今こんな……『エディントン』のプロモーションの場で、私の夢が叶ってしまって、観客の皆さんに申し訳ないのですが……」と素敵な対応。そして「とてもうれしいです」。

お二人の映画が観られる日も、そう遠くはないかもしれません。

全貌は、こちらでご覧いただけます。

『エディントンへようこそ』は12月12日公開。公式サイトはこちら

取材・文:多賀谷浩子