#723 第34回東京国際映画祭

 

本日から、第34東京国際映画祭が開催されています。

昨年まではメイン会場が六本木でしたが、今年からは日比谷周辺に。同時期に開催されている映画祭・東京フィルメックスとの行き来がしやすくなりました。

プログラミング・ディレクターが市山尚三さんに変わり、これまで「特別招待」部門があったところに「ガラ・セレクション」が新設されたのも大きな変化。

「特別招待」部門は、間もなく日本で劇場公開される映画がいち早く上映される、いわば商業的な色合いが強い部門。

そうした部門がなくなったことで、新たな才能・新たな作品を見出すという本来の映画祭の機能が際立つ編成になりました。

具体的に、どんな作品やイベントがあるのか、見ていきましょう。

アジア交流ラウンジに登壇するカミラ・アンディニ監督

東京国際映画祭が変わろうとしていたのは、実は昨年からのこと。それまで交わることのなかった東京国際映画祭と東京フィルメックスが同時期に開催され、

フィルメックスの常連監督が東京国際映画祭のイベントに登場するという動きも見られました。そのイベントが昨年、好評だった「アジア交流ラウンジ」(国際交流基金との共同開催)。

昨年に続き、是枝裕和監督が中心となって、今年もまた魅力的な二人の対談が実現。こちらのサイトでインタビューにお応えいただいたカミラ・アンディニ監督も11月3日に登場します。お相手は『あのこは貴族』の岨手由貴子監督。

イベント初回の10月31日開催は、今年の東京国際映画祭の審査員長でもある女優イザベル・ユペールさん×濱口竜介監督。互いの作品に呼応するものがありそうな、気になるお二人です。

カンヌ映画祭での『ドライブ・マイ・カー』の受賞も記憶に新しい濱口監督は、今年のフィルメックスのオープニングでベルリン映画祭で銀熊賞を受賞した新作『偶然と想像』も上映されます。

続く11月1日は、ホウ・シャオシェンやウォン・カーウァイ……魅力的なアジアの監督と組んできた俳優チャン・チェンと是枝裕和監督。

是枝監督は、自らの対談相手になぜチャン・チェンさんを選んだのでしょう。昨年の『台北暮色』のホワン・シー監督との対談も聴き応えがあっただけに、今年も期待が募ります。

続く4日は、フィルメックスの常連監督でもあるバフマン・ゴバディ監督×橋本愛さんという新鮮な組み合わせ。5日は東京国際映画祭で注目されてきたブリランテ・メンドーサ監督と永瀬正敏さん。こちらもどんなシンクロが起こるのか楽しみです。

6日のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督×西島秀俊さんは、以前、フィルメックスでもトークイベントが行われました。映画好きの西島さんとアピチャッポン監督のいい雰囲気のトークが思い出されますが、久しぶりのお二人から、どんな話が聴かれるのでしょう。

そして最終日の7日はポン・ジュノ監督×細田守監督。『パラサイト―半地下の家族』のポン・ジュノ監督と、『竜とそばかすの姫』も記憶似新しい細田守監督の間にどんなトークが展開するのか、最終日まで見逃せない組み合わせです。

公式サイトからウェビナー登録すれば、オンラインでどなたも視聴可能です。映画祭ならではの機会、お家から楽しんでみてはいかがでしょうか?

『ワールド・フォーカス』部門の『ムリナ』。クロアチアの女性監督のデビュー作です。

東京国際映画祭には、コンペティションの他にも様々な部門があります。

「アジアの風」はアジア映画に、「日本映画クラシックス」は日本の古い映画に焦点を当てていることがタイトルからもわかりますが、ちょっとわかりにくいのが「ワールド・フォーカス」部門。

こちらは、海外の映画祭で話題になった作品が上映される部門です。新設された「ガラ・セレクション」もちょっと似ていますが、「ガラ・セレクション」では、こうした海外の映画祭の注目作に加え、本国でヒットした映画や世界で知られる名匠の新作が上映されます。

いい映画であっても、配給がつくことなく、劇場公開されないままになることも多々ある昨今。映画祭は、そんな作品に字幕付で触れることのできる貴重な機会でもあるのです。

そんな「ワールド・フォーカス」部門の中で、気になる1作が今年のカンヌ映画祭で新人監督に贈られるカメラ・ドールを受賞した『ムリナ』。

カメラ・ドールといえば、日本ではかつて河瀬直美監督が『萌の朱雀』で受賞した賞です。こちらの『ムリナ』、クロアチアの女性監督の作品。クロアチアのある島を舞台に、10代の少女の心の葛藤が描かれます。

同じく監督デビュー作という点では、カンヌ映画祭の批評家週間に選ばれた『リベルタード』も。こちらは夏休みに出会った、正反対の性格のふたりの女の子の物語です。

公式サイトでは、それぞれの作品の予告編も見ることができます。そして、各作品の上映後に行われる、ゲストとのQ&Aセッションについては、

昨年までは映画館に足を運んだお客さんだけが参加できましたが、今年からは東京国際映画祭公式YouTubeで配信され、どなたでも視聴できます。

『BLUE/ブルー』(c)2021 BLUE Film Partners

そして「Nippon Cinema Now」部門では、『空白』が劇場公開中の田恵輔監督の特集も。

『空白』の他に、ボクシング経験のある監督自身がボクシングシーンの動きもつけたという『BLUE/ブルー』や『ヒメアノ~ル』の3作品が上映され、近年の吉田作品が一度に観られます。

他に、さまざまなイベントもオンライン配信されます。例えば、「日本映画クラシックス」部門のトークイベントでは、

日本映画の黎明期の大スターであり、女性監督でもあった田中絹代についてのトークイベント「女性監督のパイオニア 田中絹代」も。

11/1(月)18:00から、東京国際映画祭YouTube 公式チャンネルにてライブ配信されます。

登壇者は、カンヌ国際映画祭代表補補佐のクリスチャン・ジュンヌさん、三島有紀子監督、明治学院大学教授の斉藤綾子さん、国立映画アーカイブ主任研究員の冨田美香さん。

東京にいる人たち以外にとっても、オンラインで楽しめるイベントがより広がった今年の映画祭。8日までの1週間、楽しんでみてはいかがでしょうか。

公式サイト:https://2021.tiff-jp.net/ja/

アジア交流ラウンジ:https://2021.tiff-jp.net/ja/al2021/

東京国際映画祭公式YouTube: https://www.youtube.com/c/TIFFTOKYOnet

(文:多賀谷浩子)