昨年の東京国際映画祭でも、観た人たちの間で話題になっていた『オリビアと雲』。ドミニカ共和国出身のトマス・ピチャルド=エスパイヤ監督が、監督・脚本・編集・美術・撮影監督を手がけているアニメーション作品です。
12人のアニメーターが参加して、異なる手法のアニメーションがワンシーンの中にも融合している。それが自在に形を変えて次のシーンへとつながっていく様子は、いつしか吸い込まれ、酔わされるような魅惑があります。
映画の資料に「カリブ海の鮮やかな色彩」と素敵な表現がありましたが、まさしくそんな色彩世界。言葉にしがたい物語は、後半など、この監督は村上春樹がお好きなのだろうな……と思わせます。
そんなトマス監督にリモートインタビューさせていただきました。

ーこちらの作品には、12人のアニメーターが参加しているそうですね。それぞれスタイルの異なるアニメーションがワンシーンの中でも融合していて、その映像が変化しながら、つながっていきます。その編集というか、つながりがすばらしかったです。
トマス監督「僕のアニメーションは独学なんです。ひとつの作品を作るごとに実地で学んできましたが、僕の経験をお話させていただくと、Ted talksの依頼で、歴史や医学、科学など、若い世代に向けた短編アニメーションを作っていたことがあるんです。
その時に、それぞれ違う手法を使うことにしたんです。今回はストップモーション、今回はコラージュというふうに。
仰っていただいた「シーンとシーンをつなぐ」ということに関しては、敢えてつなぐことを意識せずに、非常にシンプルにカメラを動かすことでシーンを終えるやり方を最初はとっていましたが、その後、いろいろなつなぎ方を学んでいきまして。
そういったこれまでの蓄積があるおかげで、12人のアニメーターから、どんなアニメーションが届いても、対応できるんじゃないかという確信がありました。例えば、バーのシーンがあるんです。いかにもドミニカ!という感じのするダンスの場面なのですが、
あのシーンは5人のアニメーターが作った映像を合わせています。それぞれがどんな映像を作っているかは、知らないまま作業してもらいました。ある人には脚本と絵コンテを送って、別の人には言葉や感情を伝えて自由に作ってもらう、アニメーターに合わせた伝え方をして、そうやって上がってきたアニメーションを融合させたのが、あのシーンなんです。
なので、僕自身の仕事は、彫刻家のようだと思っています。色々な要素を練り込んだところから、形作っていくイメージです。

ーレントゲン写真を使ったシーンがあります。お花が散りばめられていて、あんなにロマンチックなレントゲン写真を初めて見ました。
トマス監督「あのシーンを手掛けてくれたのは、ヴィッキー&フレディという二人組のアニメーターです。この二人はどちらかというと、アニメーターというより美術家として映像を手掛けていますが、素材にとてもこだわりがあるんです。
レントゲンの映像は、シアノタイプという写真の技術を使っています。それを使うことは、上がってきた映像で僕も初めて知りました。
僕が二人に伝えたのは、ここは登場人物のオリビアのシーンで、恋人ラモンが寝ている間の夜の場面なんだと。トーンはブルーで、空もビルも全てがブルーになっていく。そして自然が擬人化していくイメージと伝えたら、「それならシアノタイプがいいね」と。
上がってきた映像を見せてもらったら、あまりにも美しくて、恋してしまいました。なので冒頭やダンスのシーン、色々な場面にそのモチーフを織り交ぜていて、この映画の重要な要素になりました。

他にも、そんなケミストリーがたくさん起きていたという本作。次回は、声のことにも触れたいと思います。お楽しみに!
取材・文:多賀谷浩子
『オリビアと雲』
1月24日よりシアター・イメージフォーラム他にて全国順次公開中
公式サイト:https://moviola.jp/olivia/
©️Cine Chani / Historias de Bibi / Guasábara Cine
