公開中の映画『ベイビー・ブローカー』。
是枝裕和監督の最新作ですが、監督の映画デビュー作は95年の『幻の光』。主人公の澄んだ佇まいが印象的な、夫を亡くした女性のお話でした。以降の是枝作品には、大切な誰かを亡くした家族の「不在」と「記憶」が毎作品ごとにしばらく描かれていて、
『歩いても 歩いても』でインタビューする機会をいただいた時に、そのことを伺ったら、監督が笑いながら、「海外の映画祭で取材を受けて、翌日の新聞を見たら、自分の顔写真の上にデカデカと“DEATH AND MEMORY”という見出しがついていた」という話をしてくださったのを憶えています。
是枝監督のような作家性の強い監督の興味深さは、ご自身の人生とともに作品が変化してゆくこと。『誰も知らない』(04)で、子どもの演技の自然さが広く知られましたが、ご自身が父親になられてからは、子どもは子どもでも、「親になること」の方に焦点が当てられた作品が印象深く、『そして父になる』(13)『万引き家族』(18)そして今回の『ベイビー・ブローカー』(22)と続いています。
